伝統の書筆があってこその熊野筆
選毛から作る「味がいい」筆

熊野筆伝統工芸士荒谷城舟
荒谷城舟

伝統の書筆があってこその熊野筆

選毛から作る「味がいい」筆

Aratani Jyosyu

伝統工芸士認定年月日:1994年2月25日

城舟の今

城舟氏のこだわりは、書き手の書体に徹底して応じる筆作りです。書家本人や書家から注文を受けた筆問屋から、書きたい書体や出したい線について、まずじっくりと話を聞きます。近年では「毛先から少し下にやや腰のある筆」という要望が増えました。細やかに要望に対応するため処理済みの束毛はあまり使わず、毛の下処理から工房で手掛けています。

荒谷城舟
荒谷城舟

年齢を重ねるほど良し悪しが分かってくるため、1日でできる筆の数は減りましたが、品質には一層磨きがかかっています。さか毛やすれ毛を取る工程では、親指の付け根を何度も毛先で撫で、感触を確かめます。「味を確かめようるんです。30年ぐらい続けて、やっと味のいい筆ができるようになるんですよ」と笑います。

※束毛(そくもう):束ねた状態で仕入れる下処理を済ませた毛

城舟の過去

子どものころから筆司だった父を手伝い、筆作りに親しんできた城舟氏。新制中学を卒業してすぐ、自宅の工房で働き始めました。当時は若く遊びたい盛りだったので、夜遊びをしては居眠りし、道具の櫛で文字通り叩き起こされたこともあります。当初は父や筆問屋からの指示に納得がいかないこともありましたが、言われたことを素直にこなしていると技術が身に付き、仕事が楽しくなってきました。

荒谷城舟
荒谷城舟

伝統工芸士になったのは50代のころ。認定から何年か経って、今のように「使う人の書体に応じた筆」を意識して作るようになりました。今は退きましたが長く伝統工芸士会の会長を務めたため、メディアにも何度も登場し、熊野筆のPRに尽力してきました。

城舟の未来

現在は後継者を育成するため、筆司会毛筆製造技術研修会で講師を務める城舟氏。化粧筆や画筆ももちろん大切ですが、書筆があってこその熊野筆だと考えています。「書道や書筆の魅力が広く伝わり、熊野が発展してほしい」と願いを込めます。

荒谷城舟
荒谷城舟

今まで多くの弟子に筆作りを指導してきましたが、一人前の筆司になれた人はごくわずかだといいます。10年ほど修行してやっと、筆司として大成するかが見えてくる職人の世界。好きでなければ続けられません。長年の経験の中で身に着けてきた大切なコツの部分は、後継者として認めた相手にしかなかなか教えられないといいます。研修会で教えている弟子が、一人前に育ってくれることを期待しています。

熊野筆 伝統工芸士

荒谷 城舟

荒谷 城舟 の制作した筆をオンラインショップにて販売しております。