「六十の手習い」から伝統工芸士へ
熊野筆の魅力を広げる使命を胸に

熊野筆伝統工芸士小鳥田晃祐
小鳥田晃祐

「六十の手習い」から伝統工芸士へ

熊野筆の魅力を広げる使命を胸に

Kotorida Koyu

小鳥田 晃祐

伝統工芸士認定年月日:2007年2月25日

晃祐の今

「筆作りの要は選毛です」と断言する晃祐氏は、堂々とした体格が目を引く大柄な男性です。中学卒業後は相撲や柔道の稽古に励み、相撲で国体に出場。相手と組むスポーツならではの経験が筆づくりにも生きていると言います。
小鳥田晃祐
小鳥田晃祐

状態の悪い毛からはそれなりの筆しかできないため、より良い毛を選び取るための目を養うことが筆司としての成長に欠かせません。書道の初心者から書家まで扱いやすいイタチ毛の書き味を理想としており、それを再現するための毛や軸の組み合わせに想像力と創造力が必要だと考えます。「もうちょっと細く、硬く、柔らかくなどのご意見から気持ちを汲み、相手を思いやる心で作る。それを心がけています」と、繊細な作業に打ち込みます。

晃祐の過去

晃祐氏の父は戦時中満州に渡り、シベリアに抑留されて亡くなりました。母は家業の筆作りをしながら3人の子を育て、長男だった晃祐氏は率先して家事も筆作りも手伝ったといいます。大柄なスポーツマンですが、中学生の時から毛もみや櫛ぬきなどの繊細な基礎作業を毎日こなしてきました。

小鳥田晃祐

21歳で大手自動車メーカーに就職して、筆司になる夢のため、55歳で退職しました。筆の製造会社にパートタイマーとして入社し、真面目な働きぶりを評価されて2年目に正社員に登用されました。何十年ぶりかの筆作りでしたが、手は昔の作業を覚えていました。尊敬する会社の代表の作り方を、目で見て盗んだといいます。負けず嫌いな性格から人一倍努力し、68歳で伝統工芸士の認定を受けました。

※毛もみ:稲わらの灰をまぶした原毛に火のし(アイロン)をして毛をまっすぐに伸ばし、揉んで表面を傷つけることで油分を抜いて墨含みを良くする工程

※櫛ぬき:櫛で毛を梳かし、毛のもつれをほどいて筆にならない綿毛を取り除き、揃いやすくする工程

晃祐の未来

地元・熊野町を深く愛しており、「町に貢献できることは何でもしたい」と話す晃祐氏。熊野筆の知名度を上げることが伝統工芸士の大切な使命だと考えており、政財界の著名人にもたくさんの名刺を配り、熊野筆の宣伝に繋げてきました。

小鳥田晃祐
小鳥田晃祐

会社の代表と海外に買い付けに行ったり、筆司の仲間と各国で筆文化の振興を図ったりする中で、世界情勢にも目を向けるようになりました。原料毛が不足する中、人工素材の開発に期待をかけています。これまでの常識にとらわれず、時代に合う方法を探っていくことを提案。「天然毛が手に入らなくなってから人工毛を開発しても間に合いません。二歩も三歩も先を考えて動かないと」。今こそ、未来のための変革の時だと考えています。

熊野筆 伝統工芸士

小鳥田 晃祐

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